寄稿

TKC全国会会長の退任にあたって

平成28年12月末をもって会長職を退任いたします

TKC全国会会長 粟飯原一雄

TKC全国会会長
粟飯原一雄

 この度TKC全国会の会長職を平成28年12月31日をもって退任することにいたしました。

 平成24年7月に会長という重職をお受けして4年半となりますが、この間退任の時期について私なりにタイミングをはかってまいりました。

 現在、TKC全国会創設50周年にあたる2021年に向けた活動を展開しているところではありますが、第1ステージが終わる本年12月31日がベストと判断させていただきました。

 4年半の間、TKC全国会副会長並びに各委員会及び研究会の役員の皆さま、そして(株)TKCの飯塚真玄会長、角一幸社長ほか役職員の皆さまに多くのご支援をいただきましたことに厚く御礼を申し上げます。

 さらに、全国会会長の職務遂行を直接的に、また事務面から支えてくださったTKC全国会事務局並びにTKC出版の役職員の方々にも、私の至らぬところをさまざまにお力添えいただき心より御礼申し上げます。

坂本孝司先生を後任会長に選任します

 私の後任としては、現在専任副会長を担っておられます坂本孝司先生を選任させていただきました。

 坂本孝司先生は、ご案内のように愛知工業大学経営学部・大学院教授もお務めであり、大変多忙であることは承知しておりますが、これから全国会重点活動は第2ステージに入り、ますます重要な時期を迎えています。

 今後の全国会活動を考えると、坂本孝司先生の卓越した指導力が必要となります。

「会計で会社を強くする」のフレーズの生みの親であり、「会計は本質的には経営者のために存在する」と主張する坂本先生のお考えは、今、TKC全国会が進めている重点活動の中心核を成すものです。

 すでに坂本先生には、全国会会長就任のご了解をいただき、この間、いろいろとご相談しながら、会長交代に向けて準備を進めてまいりました。

 全国のTKC会員の皆さまには、これまで私がいただいてきた以上の大きなご支援を、坂本孝司新会長にいただきますことを心からお願いいたします。

各階層リーダーの活躍に期待

 さて、全国会重点活動の第1ステージの終わりにあたって感じることは、「事務所総合力を高める」を最重要業績評価指標として活動してきましたが、その浸透度は残念ながらまだまだ弱いように思われることです。

 本年度の年度重要テーマ研修には、5000近い会員事務所の皆さまに受講いただきました。受講したほとんどの方から好評を得ていますので、その成果は第2ステージから確実に表れるものと確信しております。

 昨今、各階層のリーダーの交代が多くみられます。これからの全国会活動が佳境に入っていく状況において、リーダーの役割は非常に重要となっています。リーダーの交代はどうあるべきなのでしょうか。

 ドラッカー財団初代CEOをされたフランシス・ヘッセルバイン女史は著書『リーダーの使命とは何か』(海と月社・谷川漣訳)の中で、次のように述べています。

「リーダーの交代は、バトンをただぽんと渡せばよいものではない。有能なリーダーは組織の未来にとっても自分の未来にとって最良の交代時期を見極め、引き継ぎの綿密な計画を立てる。そして周囲と十分にコミュニケーションを図り、スムーズな移行に向けて、しっかりとマネジメントする。ただし、マネジメントといっても関わるのはそのプロセスだけである」

 どの階層においても共通していえることですが、リーダーの交代には、それなりの周到な準備が必要だということです。

 リーダーである限り、リーダーシップを発揮して組織に一定の成果なり価値創造を生むことが求められていると思います。各階層のリーダーの活躍に心から期待いたします。

 なお、TKC全国会の活動が、今後ますます重要な時期を迎えるにあたってTKC全国会最高顧問としてお二人の方の委嘱を決定いたしました。

全国会最高顧問に河﨑照行・飯塚真玄の両氏を選任

 TKC全国会最高顧問の選任は、TKC全国会の会務執行規則第9条に規定があり、「会長職を退任した者、及び学識経験者等で会長が選任した者」となっています。

 この度、坂本孝司先生とも相談し、10月1日付けでTKC全国会最高顧問に、甲南大学河﨑照行教授と(株)TKC飯塚真玄会長を選任させていただきました。

 河﨑照行教授は、これまでもTKC全国会顧問としてさまざまなご指導をいただいてまいりました。

 ご承知のように、河﨑教授は、中小企業会計基準の制度化とその普及に尽力されてきました。

 このことはTKC全国会の理念の一つである「職業会計人の職域防衛と運命打開」に大きく貢献されてきたことを意味します。

 TKC全国会は、中小企業の決算書の信頼性を高めていく活動において「中小会計要領」の普及を推し進めているところですが、河﨑照行教授には、今後もその情熱と知見をもって、ご指導いただくことをお願いし、全国会最高顧問にご就任いただく次第です。

 また、TKCの飯塚真玄会長は、激しい時代変化にあって、これまで(株)TKCのトップの立場において、常に時代を見越した先見能力を発揮され、システム面でのイノベーションを繰り返し発案され、実行されてきました。

 今後、IT化ないしデジタル化がますます進化していくなかにあって、TKC全国会のさらなる発展のためには、その卓越した先見能力に加え、その信念と情熱と知見をもってご指導をいただく必要があると判断し、TKC全国会最高顧問への就任をお願いした次第です。

 会員の皆さまにおかれましては、お二人のTKC全国会最高顧問就任にご理解をいただきたいと存じます。

戦略特別委員会を復活

 戦略特別委員会は、TKC全国会会務執行規則第29条により、常務会の建議により設置できることとなっています。

 これまで当委員会は、平成5年から平成25年3月まで、TKC全国会常務会の諮問機関として、「第1次成功の鍵作戦」をはじめTKC全国会活動のさまざまな企画を立案してきましたが、平成25年3月に「戦略諮問会議」が新たに設置された関係で、廃止になった経緯がありました。

 去る7月7日開催の第138回全国会常務会において、平成28年10月1日付けで「戦略諮問会議」を廃止し、新たに戦略特別委員会を復活することが決定しました。

 人選については、加藤恵一郎副会長(TKC北海道会会長)を委員長に委嘱させていただきました。

 またそのメンバーには、これからの税理士業界を担うべき40代の若い世代の方々を選任させていただきました。TKC全国会活動の強化に向けて当委員会の今後の活躍に期待したいと思います。

TKC全国会のさらなる発展を願う

 さて、私の執筆は本巻頭言をもって最終稿となりました。

 4年余にわたって多くの方々に拙稿をお読みいただき、誠にありがとうございました。

 特に、TKC会員各位の格差是正を願って、その視点からいろいろと書いてまいりました。会員格差は、今後も是正する方向で取り組むべき、大きな課題となっており、会員各位のご理解を求めてやみません。

 末筆となりましたが、会員の皆さまに改めて感謝するとともにTKC全国会の今後のさらなる発展を心から願い、擱筆といたします。

(会報『TKC』平成28年12月号より転載)